(3日目)
奥出雲を抜けて、山陽へ。最後は鈍行で帰る
朝は早い。松江を出て、宍道へ向かう。
今日はここから木次線に乗る。山陰を旅するなら、せっかくやから奥まで行ってみたい。早い列車に乗れば、出雲横田方面まで進むことができる。
列車が宍道を出ると、だんだん景色が変わってくる。街の風景から、田んぼや山が増えていく。南宍道、下久野。駅を過ぎるたびに、人の気配が少なくなっていく。こういう景色、好きやな。観光地に行くというより、列車に乗ったまま、その土地の中を漂っている感じ。
やがて亀嵩。ここでは時間がある。駅構内の蕎麦屋で、そばを食べることにした。亀嵩駅の蕎麦屋は、駅長が駅舎内に蕎麦屋を開いたのが始まり。今も駅の中に蕎麦屋がある。旅の途中で予約しておいて、駅でそばを受け取る人も多いらしい。山こういう駅でそばを食べるのも、旅の楽しみやな。食べ終わっても、次の備後落合行きまではまだ時間がある。急ぐ必要もない。こういう時間も含めて、旅なんやと思う。
再び列車に乗る。ここから先は、木次線の中でもさらに山深いところへ入っていく。出雲横田を過ぎ、さらに南へ。出雲坂根。ここでは時間があれば、延命水を汲みに行ってみたい。秘境風景をスイッチバックで列車が進んでいく。標高差があるから、木次線は3段式スイッチバックで山を登っていく。列車が向きを変えるたびに、さっきまで走っていた線路が下の方に見えてくる。深い谷。その谷間には、高速道路のような大きな橋脚が見える。「おろちループ橋」や。鉄道と道路が、それぞれ違う方法でこの山を越えている。谷の深い風景を抜けると、今度は高原の景色が広がってくる。
三井野原。ここにはスキー場もある。小さなスキー場やけど、こういう山の中にスキー場があるのも面白い。冬になれば、また違った景色になるんやろうな。さっきまでの深い谷が嘘みたいに、空が広い。駅を出ると、また山風景。次の駅までの間にも、ほとんど人の姿が見えない。こういう景色を眺めながら、ただ列車に揺られている。それだけで十分楽しい。やがて備後落合。ここで乗り換える。
木次線から芸備線へ。今度は新見方面へ向かって、さらに東へ進んでいく。東城あたりまで来ると、少しずつ風景が変わってくる。深い山の景色から、田んぼや集落が見える、いつもの田舎の風景へ。そして新見。ここまで来ると、空気がまた変わった気がする。山陰から山陽へ。旅の景色が、少しずつ日常へ戻っていく。
新見から岡山へ。岡山で乗り換えて、姫路へ。1日目は姫路から西へ向かった。今日は逆に、姫路へ戻ってくる。そこからさらに阪神間へ。
朝は松江にいたのに、一日かけて奥出雲の山を越えて、山陽まで戻ってきた。今回の旅は、いろんな街を観光したわけじゃない。でも、列車に乗っているだけで、海から山へ、山から田舎へ、そして山陽の街へと、景色がどんどん変わっていった。これがおれの旅なんやと思う。行けるところまで行ってみる。その先に何があるかは、行ってみないとわからない。そして、また次の旅へ。今度はどこまで行こうかな。

今回は、いつものように行けるところまで行って、山陰を端から端まで走ってみた。萩では少しゆっくり街を歩いて、さとみが言ってた「街の空気感」っていうのも、なんとなくわかった気がする。でも、やっぱりおれは列車に乗って、知らない景色の中を進んでいくのが好きやな。海を眺めて、山に入り、木次線を抜けて山陽へ戻る。同じ山陰を旅しても、見ているものは人それぞれ。次はみんなで旅を考えるのも、ちょっと面白そうやな。
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